大好きな「菊地成孔の粋な夜電波」が終わってしまいました。
そこで、自分の中で心に残る名シーンNO1を紹介します。
2014年4月25日の放送より。
この回は、大切な誰かに曲を送りたいというオーダーに菊地さんが応えて、選曲する 「菊地成孔のミュージックプレゼント」です。
この回の終盤「無くなった父から曲を送られたい。」という相談に対する菊地さんの回答に痺れました。
【以外、若干簡略化した書き起こしです。】
父は昨年の9月になくなりその後、引きこもりになり、鬱病と診断された。
この冬はひたすら引きこもり本を読んでいた、お金が無くなると母のお金を盗んで本を買った。
この春からは社会復帰をしようと就職した、父の死から変になってしまった自分を父はどう思っているのが気になっている。
そんな自分に父から曲のプレゼントを貰いたい。
菊池さんも10年前に父を亡くしている。
菊池さん曰く「この人の鬱病の発病因子は父の死やそれに伴う日々の様々なあれこれ等考えられますが、間違いなくトップ5に入る物として本の読み過ぎが有ると思いますし、文面から読み取るにそれをご自覚されてますね。そこを指摘してくれというフックすら感じます。
以外これは100パーセント私の持論なので異論を唱える方、考えが違う方はいらっしゃるのは百も承知の上で平然と申します。
活字、書物は鬱病を引き起こしやすく、依存傾向が出ると病状を悪化させます。
これはあらゆる状況下での単独の因子強度では有りません。
音楽が活字と同量で有れば問題ないです。
音楽が不足、もしくは耳に入っていない。これは聴いていないと言う事ではなく耳に入っているが体に入っていないと言う状態、活字が100パーセントになってしまうと間違いなく人間は自滅します。
逆に音楽が100パーセント充実した場合、生活は破綻してしまうかもしれないけど精神的には充実します。
この方のの文章は非常に文学的で音楽の姿が全く無いですね。
額面上はこのメールは楽曲リクエストとなってますがこの方は音楽を求めてないと思います。
父の言葉を求めているだけで音楽は求めてないですよ。
私は文学は殆ど読まないです、フロイド止まりにしてます。
これよりこの方に直接話しかけさせてもらいます。
私と1つ取引をしませんか?
不幸にもあなた、今まで音楽を聴いたことが無かったと思うんです。
いや「聴いてきましたよ」と仰るかもしれませんが、「美味しく食事をしてない」とか「本を読むけど覚えていない」とか人は不全を起こしますよね。
あなたにとって音楽はそういうモノだと思います。
なので今から最初の音楽経験をご用意させていただきます。
私はあなたのお父様に成り代る事はできません。
しかし、現在お父様が見られている光景や思索している内容を文学では描く事が出来ません。
しかし音楽なら簡単に出来ます。
音楽は死者の言葉に耳を傾けると言う側面が強く、単位時間での情報量が文学より圧倒的に多層的であり、喪失や摩滅という自覚による鬱症状に対する抗鬱作用が非常に有ります。
私の取引の条件は以下のものです。
あなたを読書に依存させている要因、即ち「本」を私がこれから流す楽曲と引き換えに10冊処分していただきたい。
まずは何より書を捨てましょう。
ただ捨てるのではない、音楽と引き換えにです。
その10冊はあなたに大きな影響を与えたもの、最近手に取りがちなものから選んでください。
プレイする曲は10分以上有ります。
即ち1分に1冊という計算になります。
悪い取引ではないと思います。
もしこの取引には乗らない、私を信用しない、というのであればかまいません。
ラジオのスイッチをお切りください。
それではあなたがどちらを選択したかは分からないまま楽曲をスピンしたいと思います。
それでは、本日最後の曲です。
無限の自由と空間をどうぞ。
サン・ラ・アーケストラ で「スリーピング・ビューティ=眠れる美女」
●放送はこちらで聴けます。
http://blacktube.tank.jp/denpa954/ex/season07.html
あとがき
僕が「粋な夜電波」を通して菊地さんに教えてもらった1番大きな事は「音楽は最高」という事です。
どのジャンルがとかどのアーティストがとかではなく、「音楽」というもの自体が至高で有り、物理的に精神や肉体に健全さをもたらすと教えてくれました。
そして、それを最もハッキリと語ってるシーンがこの回のこの部分です。
この投稿を読み、1人でも多くの方がアーカイブに耳を傾け、「音楽」の「効用」に酔いしれて頂けたら幸いです。

菊地成孔の粋な夜電波 シーズン6-8 前口上とコントの爛熟期篇
- 作者: 菊地成孔,TBSラジオ
- 出版社/メーカー: キノブックス
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